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第7回 読書体験

開講日: 2019年11月17日

​講師: 特任准教授 佐藤雅明

 第7回となる今回は、「読書体験」と題し、佐藤雅明 政策・メディア研究科特任准教授より講義が行われた。

 出版統計(公益財団法人 全国出版協会)によると、書籍・月刊誌・週刊誌をあわせた出版物の売上額は、年々現象を続けている。コミックスについても、それぞれ減少傾向にある。ムック本や文庫本については、新刊の点数は増えている一方で、販売額は減少傾向にある。

 近年は、WEBサイト上で連載されていた小説が書籍化され、全世界で累計2200万部以上発行されるに至った『ソードアート・オンライン』のように、様々なメディアとの関わりの中で、小説が生み出される環境も変化を遂げている。

 

・本の価値

本は、装丁や触り心地、所有感といった、そのものの形態が持つ物質としての価値(プロダクト・タンジブル)記載された知識やデータ、写真、イラストについてのコンテンツの価値(プロダクト・インタンジブル) そして、書かれた思想、発想に触れ、作者といわば「対話」する事ができる、体験としての価値(サービス)を有している。

 膨大な情報量を持つ映像メディアに比べ、書籍は、一見すると情報を伝える力が弱いように思えるかもしれない。しかし、本が情報を伝える手段である「ことば」は、その抽象性に最大の強みがある。様々な考え方や概念を伝える際に、読み手の解釈を利用しながら伝えることのできる文字による伝達は、非常に効率のよいものであるといえる。

 

・本との出会い

 本と出会う方法は、多様化している。
 

 本屋は、本という器(=フォーマット)を扱ういわばポータルサイトともいうべきもの。
 

 本屋の在り方についてもグループワークで検討してみてほしい。
 

 一部の図書館では、喫茶店を同居させたり、有料の閲覧スペースを設けるなど、新たなサービスを模索している例がある。(授業では「大和市文化創造拠点シリウス」(神奈川県)を紹介)

 

 本との出会いを作り出す方法として一般的なのは、単に「面白いから」と薦める(レコメンデーション)ことであるが、これでは読み手の意志を削ぐこともあるかもしれない。ECサイトで一般的な、購買傾向を基にした機械的レコメンデーションは果たして適切なのか、のように、どのような薦め方が読み手にとって魅力的であるか、考えてほしい。例えば、図書館で偶然出会った(セレンディピティ)、という要素を電子書籍ではどう演出するか、といった発想がある。

 

・新しい表現

 例えば、WEB上で安定・統一した縦書き表現を実現させるため、WEB書式の標準化を行う動きが活発化している(W3C・縦書きCSS)。縦書き表現には、専用の行間、禁則処理、ルビなど、様々な処理が必要になる。ブラウザなど読み手の環境によって表示が崩れることのないよう、書式と技術の標準化が進められている。


 このように、多様化するメディアの中での表現には、新たな取り組みが必要になる例もある。
 

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