第3回 出版の可能性

開講日: 2019年10月8日

​講師: 吉井順一

 第3回となる今回は、「出版の可能性」と題し、講談社の吉井順一氏より講義が行われた。
吉井氏は『FRIDAY』の編集をはじめ、様々な週刊誌、月刊誌の制作現場に携わってきた。


・月刊誌と週刊誌

 発行部数が多い雑誌について、列車で運搬していた時代は、流通の面から月刊というペースが精一杯であった。発売日は全国一斉であるため、北海道・沖縄の遠隔地から発送を始める。最後に鉄道駅の売店に発送される。金曜発売の『FRIDAY』であれば、木曜夕方には店頭に到着し、順次発売されていた。このように、書籍としての雑誌には流通に関わる時間面での制約がある。

 内容については、週間、月刊の出来事を記事にするものと共に、連載形式がある。作家が単行本に相当する原稿を一気に書き下ろすことは非常に困難である。また、作品を小分けにして常に読者の目に触れさせる狙いもあり、一般的な手法となっている。

 

 作家から原稿を集めて書籍にするのが出版社の仕事ということもできるが、締め切りを設けることが大切である。締め切りがないと、人はモノを書いてくれない。漫画雑誌を始めとする現場では限界に近いスケジュールが組まれている。そのため、雑誌掲載版と単行本で内容が少なからず変わっている例もしばしば見受けられる。このように、制作のためには締め切りを設けて原稿を確実に集めていく作業が重要となる。週刊誌では、作家から原稿を受領するタイミング、印刷所に入稿するタイミングなど、曜日ごとにスケジュールが明確化されている。また、電車の中吊り広告は、本誌よりも先に締切が訪れるため、未だ取材中の記事について先に見出しが公表されることもあった。この際に虚偽の内容とならない「さじ加減」が求められ、負担が大きい部分であった。

・「価値」はどこから生まれるか

 

 出版物や作品を作り出す枠組みには、著者、カメラマン、実演家といった個人新聞記者、編集者、校閲者といった法人に属する存在、製作委員会、コンソーシアムなどといったものがある。

 新聞社に属する記者など、組織に属して記事を書く場合は、契約上その個人が著作権を主張することはない。しかし、雑誌の取材におけるフリーカメラマンなどの場合は、取材中に撮影した写真について、著作権法上は撮影した個人に著作権が認められる。記事化や公衆送信にあたって財産権を譲渡する形で利用が行われる。
制作委員会やコンソーシアムは、法人同士が契約を結んで制作し、出資や利益分配を行うもの。

 

 近年は、媒体の多様化・特に電子化に伴い、こうした送り手・発信者と受け手の境は曖昧になっている。また、送り手の中でもリスクの負担、利益(金銭・名誉)の分配の面において、複雑化が進んでいる。