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第11回 デジタル出版
開講日: 2019年12月17日
講師: 株式会社ボイジャー 萩野正昭
第11回となる今回は、株式会社ボイジャーの萩野正昭氏による講義が行われた。
株式会社ボイジャーは「エキスパンドブック」等、日本における電子書籍コンテンツの先駆けとなる作品を多数手がけてきた。
清水徹著『書物について』では、本を
1.記号が何らかの「支え」のうえにあり、
2.時間が経過してもほぼ同じ意味内容が発信される装置
3.持ち運びが可能である
ものであるとした。つまり、これを満たす液晶の付いたデバイスはすべて本になるともいえる。
しかし実際には、例えば電気がなければ読めない「充電の危機」、デバイスの生産中止による「撤退の危機」、リーダー・ビューワーがデバイスによって異なる「分裂の危機」の存在が挙げられる。本は本来いつまでも、誰でも読めるものであるという点において、電子書籍は課題を残している。
ダグラス・アダムス著『銀河ヒッチハイク・ガイド』をはじめとする「エキスパンドブック」プロジェクトのパッケージは二つ折りのカバーの中にフロッピーディスクが綴じ込まれており、本のような外見となっている。コンテンツはテキストと音声や動画を融合させたものであり、たとえば『クラシック音楽ガイド「バッハ以前」』では、音楽CDと解説文がリンクしているなど、新たな表現を実現した。
このように、ボイジャーは既にあるものの組み合わせから新たなコンテンツを作り出してきた。
出版業界は、既存の価値にとらわれず、今後も新しい価値の発展を推進すべきである。
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