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第4回 メディア環境の変容

開講日: 2017年10月17日

​講師: 加藤文俊

4回目のこの回では、加藤教授からメディアやコミュニケーションの観点から、出版・パブリケーションのこれまでの回とは別の捉え方が紹介され、この授業自体の楽しみ方についても取り上げられた。

加藤文俊 教授

まず、出版の話について入る前に、あらゆる物事を考える・捉えるための方法論が紹介された。一つ目の解釈の柔軟性は、議論を始める前提として、物事の捉え方は人によって千差万別であり、自分の捉え方だけに捕らわれず受け入れる余白を用意しておくこと。二つ目の論争の終結は、議論には当然終結が用意されており、それがどのような提案になるのか、どのようなアウトプットになるのか、予算はいくらなのか、など、議論の最終的な終着点をきちんと踏まえておく、ということ。三つ目の終結のメカニズムは、二つ目で取り上げた議論の終着点について、なぜその終結をしたのか、意味付けをきちんとするということだった。

そして、上で紹介した方法論を踏まえ、自転車の発展の歴史を紐解き、自転車を取り巻く社会構造を整理、これを出版に当てはめて、解説が行われた。自転車の発展から見えた結論として、社会グループの相互の力関係よって進歩の道筋が決まる、というものがあった。自転車の場合は、メーカー、スポーツ性重視の男性、安全重視の女性・高齢者などの社会集団がいた。この中で、特に19世紀はスポーツ性を重視する男性の意見が主流だったため、安全重視のデザインで発展をすることがなかった。

​これを出版の場合に置き換えると、本の周りには読者・著者・編集者・出版社といった社会集団がいる。そして個々の社会集団ごとに固有の問題をかかけており、例えば著者であれば、自己表現・メッセージ・業績などといった問題(思惑)を抱えている。このような問題それぞれに調整方法が存在し、各社会集団ごとの問題と調整方法が干渉しあった結果、終着点が決まる、という構造になっている。

​前回のグループ討議の場面で、著者や読者目線から考えられたアイデアが多く見られたが、実際の出版ビジネスにおいては、他にも多くのステークホルダーがいて、彼らの利害関係も踏まえた提案を考えることで、より現実的な出版の未来を構想できる、ということだった。

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