第6回 出版と日常生活

開講日: 2017年10月31日

​講師: 加藤文俊

今回は、加藤先生から出版が置かれている、人々の現在の日常生活について、そして読書環境や社会構造について、過去の変遷を踏まえながら講義が行われた。

加藤文俊 教授

​まず、文化庁の「平成25年度『国語に関する世論調査』」の結果を題材に、現在の国民の読書環境を紐解いていく。下のグラフを見ると分かる通り、1人が1ヶ月に読む本の冊数は年々減少傾向にある。そして読書量が減った理由について質問をしてみると、仕事や勉強による時間的余裕の無さ、そして視力の低下など身体的な理由に次いで、情報機器で時間が取られる・テレビの方が魅力的である、という理由が続く。これからも分かる通り、近年娯楽は非常に多様化しており、中でもスマートデバイスの普及により、24時間インターネットに触れ続けることが可能になったことで、かつて読書に使われていた時間を他のコンテンツに取られてしまっている事実が明白になった。また少数意見ではあるものの、読書離れが進んだ結果、近所に本屋や図書館がない、という問題が起こっていることも明らかになった。更に興味深かったのは、このような状況においても人々が読書に対する価値や必要性を認識していることだ。事実、66.3の人が自分の読書量を増やしたいと考えており、また幼少期に多くの本を読むべきと人々が考えている、という統計も示された。

次に、このように、読書機会が減ったものの、読書への関心を失ってない、という状況であることを確認した上で、今度は読書から時間を奪った情報機器の中で人々が読書をしているのか、つまり電子書籍を利用しているかどうかを確認していく。下のグラフの通り、電子書籍を利用する人々は全体の17.3%に留まる。しかも紙の本・雑誌・漫画しか読まない、としている層が45.2%もいることが分かる。そこで、紙の本と電子書籍どちらを利用するか質問すると、60.6%が紙と答えており、日本人の相当数が紙に対して愛着を持っていることが判明した。では、多くの人が情報機器に時間を費やしている中で、電子書籍を利用している人があまり多くないという現状が明らかになったので、今度は電子書籍を利用していない人々が何をしているのか、という話に議題は移っていく。そこでテーマに上がったのだLINE、Twitter、FacebookなどのSNSである。ネットサーフィンや動画視聴などの利用方法もあるが、SNSに時間を費やしている層は非常に幅広い。これはSNSという、写真や移動の記録などの自己掲示、そしてなにより他者と気軽にやり取りができる「場」が用意されたことで、SNSで起こるコミュニケーションが、読書や他のコンテンツに並ぶ物に昇華したことを示している。授業ではここで、これまで出版物を取り巻いてきた「場」の紹介がされ、保管庫から回廊、そして本棚へと移る中で、情報の保存用から個人が閲覧するものへと変化していった歴史が紹介された。そこから見えたコミュニケーションと場の関係について取りまとめが行われた。