第7回 日本語と出版

開講日: 2017年11月7日

​講師: 吉井順一

7回目の今回は、日本において出版の未来を考えるにあたり、前提となる日本語自体の解説、そして日本語表現ならではの特殊性と難しさについて紹介がされた。

吉井順一 氏

まず前段として出版において日本語表現がどのように突き詰められてきたかの簡単な紹介がされた上で、日本語の文字種類と文字書体について代表的なものが示された。特に書体については明朝とゴシックを例に、各出版社・新聞社ごとにどのように特徴があるのか紹介がされた。またスクリーンにおけるエディトリアルの歴史おいて、TEXエディターが登場したことの重要性について解説がされた。そこから話は縦書きと横書きの話に移り、特にコンピューターにおける文字の話が集中的に取り上げられた。ラテン語を中心とした英語・西ヨーロッパ言語を網羅するASCIIという文字コードに対し、中国語・日本語・朝鮮語など東アジアの言語を表現する言語体型をCJKという文字コードの標準化の話、そしてWebサイトにおける縦書き表現の標準化の話が紹介がされた。日本語表現のコンピューターの世界における実現というのは、1回目に村井先生から紹介があったように、彼がインターネットの黎明期から継続して取り組んできたものである。またWebの縦書きについては、現在W3Cの日本支部(W3C KEIO)を中心として、CSSのワーキンググループを中心に議論が進められているものだ。

​話は出版において重要な日本語のルールについてに移り、ルビや禁則処理といったルールについて紹介がされた。同じ感じでも複数の読み方をする日本語で、あらゆる漢字にルビを振る難しさ、そして場合によって使い分けられるルビの種類の話、さらには出版社、印刷会社がこのような日本語のルールにきちんと即した出版物にするために、DTPにおいてどのような工夫がされてきたのか、など、様々な領域に話は及んだ。また、Webサイトや電子書籍においては障害者の方々が問題なくコンテンツを利用できるようにする、アクセシビリティへの対応の話が紹介された。視覚障害者の方が読み上げソフトを使う際にどのようなニーズを持っているのか、どの場面で問題が発生するのか、アクセシビリティ対応で重要となる要素が紹介された。

​後半は、日本語の表現における問題点に議題は移る。特に近年問題になっているのが、海外出版の際に現地の文化だと差別にあたる表現への配慮である。筆者や編集者が全く意図していない表現が、受け取り側によって差別表現だと感じてしまう例について紹介され、発信することの難しさについて解説がされた。この問題に対して、短絡的に放送禁止用語のリストを作ってしまうことへの吉井氏の違和感、そしてとにかく文脈の中で表現が適正かどうか考えることの大切さの話が、活字出版における信条として示された。また主に週刊誌における公人の扱いにも言及し、編集の現場でどのようなプロセスでその情報を発信するかどうか、公人とするかどうかの判断が行われているかについて、解説がされた。最後に「事実」と「真実」の違いという話に話題は移り、報道・言論の自由がどこまで許されるのかという線引きの話、昨今盛んに話題になっているFake Newsの問題についても触れながら、授業を締めくくった。